砂糖に埋葬される世代

砂糖に埋葬される世代


DEATH BY SUGAR


人間の免疫システムは癌の克服法を知っている 

今や半ば常識となりつつあることですが、どんな人でも、一生のうちに何らかの癌を何回か患うと言われています。ですから癌の殆どは自然治癒しているわけですね。

もちろん、進行が遅いタイプの癌は存在しても一生気が付かない場合が多いでしょう。 

一般に、どのような医療でも人間本来の治癒能力へ手を貸すのが精いっぱいであって、それが出来れば大成功です。 パックリ開いた傷口を縫い合わせて消毒することは出来ますが、そこから先は、組織が元通りになる様子を黙って見ている以外に ありません。

人間の叡智が自然のそれと比肩することは無いのです。 結局のところ、人間本来の機能をどこまで機嫌良く出来るか、これが健康法の本質となります。 

今の人類が何十年にもわたり、何兆円をかけても、何千万人の命を懸けても解明できない癌・・・。 
これを健全な人間の免疫システムは毎日処分しているのです。 


当面、免疫を強化することが全ての健康法における最大のポイントであり、また免疫を弱めるようなものを排除することも同様に 重要なポイントとなってきます。 

免疫を弱体化する物質で最も身近なものに、砂糖があります。 

糖質と糖尿病の関係を疑う人はいませんが、糖尿病と癌にも関係があります。 

癌細胞は糖質しか食べないというのは有名ですね。 糖質は癌の唯一のエサですし、また癌の天敵(免疫システム)を弱らせる働きもあります。 砂糖は、癌の最大の支持者であり、保護者であり、人類の敵であると言えるでしょう。 

砂糖の害に拍車をかける独立リスク要因 

少し脱線しますが、米飯主食で来た日本人に何故糖尿が増えているのか、さらに、 日本人であっても糖質を制限しなければならない理由として、DEATH BY CALCIUM(カルシウムによる死)に関連した糖尿病要因があります。

米国国立心臓・肺・血液学会が主催したIRAS(インスリン抵抗性と動脈硬化について)という有名な研究があります。 http://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/study/NCT00005135?term=Insulin+Resistance+Atherosclerosis+Study&rank=1 

この研究はかなり詳細かつ膨大なデータ集積に基づいているため、今なお、IRASデータの解析に基づいた研究発表が行われています。 中でも昨年9月に行われた、欧州糖尿病研究者協会発表界においては、非常に重要な発表がありました。 

それは血中カルシウム濃度は、血糖値、インスリン分泌量、インスリン抵抗性、とは無関係に糖尿病リスクを増大させるというもの です。しかも食事からのカルシウム摂取量とも無関係なのです。 

この血中カルシウム濃度が、血糖値やインスリン反応と独立した糖尿病リスクファクターであるということは非常に重要で、カルシウム仮説を支持するものです。 

炭水化物の摂りすぎ、砂糖の摂りすぎに警鐘が鳴らされている昨今、先進国での食生活はやや改善されています。少なくとも 意識的には浸透してきた感があります。にも拘らず、糖尿病が激増しているのはどういうことなのでしょう?

人類はもともと炭水化物を主体の一つとした食事をし、進化してきた動物です。江戸時代の飛脚がパレオ・ダイエットをしていたわけでも、昭和初期の日の丸弁当世代が糖尿でバタバタ倒れていたわけでもありません。

人間は「ゼロ・カーボをしないと糖尿になる」動物では無いのです。 もちろん環境ホルモンや農薬といったファクターは今でこそ見逃せませんが、昔ながらの日本食を続けてきた世代にはその蓄積が少なく、また肥満でもありません。 最近の成人病激増を説明するにあたり、「倹約遺伝子」という日本人古来の前提条件を理由にするのも辻褄が合いません。 

その点、このカルシウム仮説は独立した危険因子であるが故、食生活の変遷とは離れた軸で病理・病態をうまく説明してくれるわけです。

また現世代にとって、椅子に座っている時間の増加は誰もが認める状況です。 そもそも人間は電気仕掛けです。カルシウムイオンのような重要な伝達物質のバランスがほんの少しでも崩れると、老化(死)を早めます。

一般に、カルシウムイオンは細胞内にはほんの少し、細胞外には大量にあります。その比率は1対100万にも上るため 、細胞にとって、ある意味非常に危険な物質であると言えます。 


糖質制限はより必須に 

さてこの椅子に座っているかベッドに寝ているかが人間の大部分の行動を占める状態では、「ローカーボ」はあたりまえとなってきます。


それ以上に重要なのは前述した砂糖を避けること、「ノー・シュガー」の実践です。 全ての食事法は身体の免疫保持が前提であると考えると、免疫を抑制する血糖を抑えることは当たり前となります。 

糖尿病の人は傷が治りにくいとか、足が壊死して切除されたとかいう話をよく聞きますよね。 

免疫の観点からすると、血糖値が高い状態では「ばい菌」がやりたい放題になるので無理もありません。 

この現象は非常に有名で1973年の著名な研究[1]によって明らかになっています。

100グラムの糖質を摂った場合、それがブドウ糖であろうと、砂糖であろうと、蜂蜜であろうと、オレンジジュースであろうと、以降5時間にわたり免疫システムがシャットダウンします。 

正確には外敵から身を守る白血球の主力選手、好中球の活動が半分くらいに低下してしまうのです。

これでは傷が腐るどころか、癌になっても不思議はありません。 
何故、高糖状態において好中球の活動が鈍るのかということ、この仕組みは大体次の通り。 

グルコースがふんだんにある状態ではとりあえず血糖を使用する(下げる)のが先決ということで、グルコースは、まず第一オプションでヘキソキナーゼ(酵素)によりG6Pへとリン酸化されます。

ヘキソキナーゼは十分にありませんので、ヘキソキナーゼが売り切れ次第、第2オプションのアルドース・リダクターゼを使用したソルビトール変換へと作業が移行します。結局、このソルビトール変換が長時間続きます。ソルビトールも最終的にはクエン酸回路に入りエネルギーとなります。 

グルコースからソルビトールを造る際、アルドース・リダクターゼが使われますが、その際補酵素としてニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)が頻繁に利用されます。このニコチン〜(NADPH)は電子の運び屋を営んでおり、繁忙期には専らエネルギー生産(グルコース利用)の方に回されます。 

さて好中球が外的をやっつける際、銃弾となるのはフリーラジカルです。そうです、いわゆる老化を促進すると言われている活性酸素・猛毒の部類です。これらを使って細菌類を殺すわけですね。

この時、電子の受け渡しを専門としているニコチン〜(NADPH)が、グルコース燃焼系に駆り出され、好中球の仕事を受けられないとなると、フリーラジカルを製造することが出来なくなります。そうすると好中球の弾が無くなって戦えなくなるわけです。 

そのため、普通であれば何のことない退治でも、糖尿の人ではちょっとした戦争に発展してしまうわけですね。外的との戦いが大きくなると、爆薬(活性酸素)が大量に使われるため、身体へのダメージが残り、動脈硬化や種々の成人病として蓄積していきます。

こういった戦争は遺伝子の損傷を引き起こし、癌発生の引き金にもなります。 

血糖値を低く保ち、免疫システムを100%稼働させておくことが、身体へのダメージ蓄積を防ぐことになります。 

この他にも、ニコチン〜(NADPH)が不足した状態では、活性酸素ダメージを中和するグルタチオンの生成が阻まれるなど、悪循環は深まります。 またソルビトールが過剰に生産されると、それ自体でも数多くの弊害があります。 

砂糖が肝臓死因のナンバーワンになる 

砂糖(ショ糖)は果糖とグルコースで出来ています。砂糖の片割れである果糖は、肝臓でしか代謝されません。 そのため、肝臓にダイレクトに負担をかける栄養素であると言えます。

それだけなら良いですが、肝臓である程度代謝が進むまで、身体のフィードバック機能をすりぬけた状態で反応が進むため、果糖を口に入れるということは、肝臓のエネルギーが自動的に収奪されることを意味します。

果糖もブドウ糖も最終的なATP収支はそれほど変わらないという人がいますが、肝臓での収支を見た場合、果糖を摂ると肝臓のエネルギーはマイナスとなります。果糖のエネルギー利用は肝臓を通ってからとなります。 

肝細胞のエネルギーが不足すると、肝細胞が死に、その結果、核の成分が外に放出され、それが血中の尿酸となります。 高尿酸が高血圧を始めとする成人病の引き金になるのは周知のとおり。

同時に肝臓へのダメージは蓄積します。肝臓の傷は繊維状になり、そこに脂肪が集まって脂肪肝、しまいには肝硬変へと移行します。 

非アルコール性肝硬変が10年で10倍に 

アメリカの肝臓移植希望者リストにおいて、非アルコール性脂肪肝によるものが過去10年で10倍となっています。[2]専門家の推定では2020年までに、C型肝炎を抜き、肝臓移植原因のナンバーワンとなることは確実と見られています。 

これは肝臓病と砂糖摂取の因果関係が、一般には無視されているということを如実に示すものです。 

最新の研究ではすでに若者の1割が非アルコール性脂肪肝を発症しているということです。 [3]

今のところ、これに対する治療法は、食事を変える以外に無く、「動物性脂肪は危険、低脂肪はOK」というような誤謬がはびこる限り、肝臓移植は増え続けるでしょう。 

ちなみに、臓器の密輸、密売が取りざたされる中、既に移植ビジネスは非常に大きな産業となりつつあります。 2011年現在、肝臓移植一件の平均費用は6464万円程度です。


 

[1] Sanchez A, et al. Role of sugars in human neutrophilic phagocytosis. Am J Clin Nutr 1973 Nov;26(11):1180-4.


[2] Charlton MR, Burns JM, Pedersen RA, et al. Frequency and outcomes of liver transplantation for nonalcoholic steatohepatitis in the United States. Gastroenterology. 2011;141:1249–1253.

[3] 1016/j.jpeds.2012.08.043. Epub 2012 Oct 17.
Increasing prevalence of nonalcoholic fatty liver disease among United States adolescents, 1988-1994 to 2007-2010.


コメント